市場の見通し: データセンター開発がもたらす、タイの不動産市場の新たなサイクル
— September 02, 2024
2024年11月02日
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Jason YANG
最高経営責任者
タイの不動産市場は、世界の多くの市場と同様にサイクルによって動いてきました。これまで数々のセクターが台頭と衰退を繰り返してきましたが、現在、オフィス不動産は顕著な低迷期にあり、住宅セクターも停滞しています。不動産の主要な2分野が停滞しているという状況は、「新たな解決策=新たなサイクル」が求められていることを示しています。

その答えとなり得るのが、急速に拡大するデータセンター需要です。

インターネットの利用が急増し、より多くの人々や企業がデジタルインフラに依存するなか、タイは大きな転換点に直面しています。現在のデータセンター供給量は、同国の増大する需要を満たすにはほど遠い状況にあります。Microsoft、AWS、Googleといった世界的なテック企業が、すでにタイでの事業拡大を進めており、同時にグローバルな開発ファンドもデータセンター市場を投資機会として注目しています。

これは単なる短期的な供給ギャップを埋めるという話ではなく、タイの不動産開発における新たなサイクルの始まりです。データセンターは、デジタル時代においてますます重要性を増しており、従来の不動産投資に代わる新たな主要分野となる可能性を秘めています。
CBD(中央業務地区)と郊外の双方は、データセンター開発においてそれぞれ独自の優位性を持っています。CBDは主要企業や金融機関との近接性が高く、低レイテンシーで高性能なコンピューティング環境を提供できる点が強みです。一方で郊外エリアは、より広い敷地や低コスト、将来的な拡張余地を備えており、グローバルなデジタルインフラを支えるハイパースケール型データセンターに適しています。

タイ政府もこの新しいサイクルの可能性を認識しており、データセンター開発を促進するための各種インセンティブや支援策を積極的に打ち出しています。これは開発事業者にとって大きな追い風ですが、同時に周辺環境との調和という課題を丁寧に考慮しなければなりません。バランスを欠いた開発は、地域全体の均衡を損ねる可能性があります。

そのための一つのアプローチとして、利用が低下したオフィスビルを再活用する方法があります。オフィス市場が縮小するなか、データセンターはこうした既存資産に新たな価値をもたらす機会となります。PIDCでは、すでにこの方向性を見据え、エッジデータセンター開発に注力しています。これらの小規模かつ高性能なデータセンターは、既存のオフィスタワーにも導入可能であり、エンドユーザーに近い場所でテクノロジーインフラを提供すると同時に、遊休不動産の再活性化にもつながります。
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PentaPointは、この新たなサイクルに備えるだけでなく、自らそれを形成していく立場にあります。不動産とデータセンター開発の両方における専門性を活かし、グローバルテック企業や開発ファンドに必要なインフラを提供します。大規模開発からオフィスビルのエッジデータセンターへの転換まで、PIDCはタイにおける次の不動産革命をリードしていきます。

不動産市場は今、大きな転換期にあります。変化に対応する者こそが次の成長を掴むことができます。データセンターは単なる「新しいインフラ」ではなく、タイ不動産市場における次なる成長サイクルの基盤となる存在です。
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かつて住宅や商業施設のブームが不動産市場を形成してきたように、データセンターもまた新たな潮流として市場の姿を変えていく可能性があります。そして、従来型の不動産とは異なり、データセンターは終わりの見えないデジタル活動の爆発的な拡大によって支えられているのです。
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※本レポートは執筆者の個人的見解に基づくものであり、PIDCの公式な見解を示すものではありません。また、本稿は現時点(2024年11月02日現在)の見解を示したものであり、将来変更される可能性があります。